都営大江戸線蔵前駅近くにシェアスペース「マチナカ製図室」(台東区寿1)がオープンして半年がたった。
「大学の中にある製図室を街ナカに置いたらどうなるか」という社会実験として3月23日にオープンした同施設。建築学系の学生とOBが中心となって立ち上げた。メンバーの共同出資で元ボタン工場だったという7.5坪の空き家を借りたという。
企画した守屋真一さんと菊地純平さんは「東東京エリアに面白さを感じていたときに、縁があってこの物件を紹介していただいた」と蔵前に決めた経緯を話す。
自分たちの手でリノベーションした内装は、二重天井をはがして照明を入れサッシや壁を塗ったほか、スペースの中央に板で作ったテーブルを置き、来た人が集える空間にした。守屋さんは「ここを中心にいろいろなものが生まれていくイメージにしたかった」と話す。「建築業界も学生も今はパソコンで製図しており、製図台は使っていない。そこへ向けたメッセージの意味もある」とも。壁にはつるしたロードバイクや手作りの本棚など好きな物を取り入れ、実施済みの企画から考案段階のものまでアイデアを一面に貼っている。
「まちづくりに携わる建築の勉強を、ほとんど学内で完結させていることにギャップを感じていた」という守屋さん。同施設を構えたことで街の人に声を掛けられたり、物件の改装を依頼されたり、新しい交流が生まれたという。
学生の菊地さんは「学内にいるだけでは先輩後輩のつながりしかできないが、ここでは社会人や違う大学の学生、地域の人とも話せるので、客観的な目で見られる」と手応えを口にする。設計事務所に勤務する守屋さんは「製図室はみんなが同じ場所に集まり課題やコンペに向けた制作など、同じ方向を向く不思議な場所。社会人になっても、こうした場所を失うのはもったいないと思った」と話す。
ホテルやカフェの内装など依頼を受けたプロジェクトの打ち合わせや、持ち寄った本を貸し出す「マチナカライブラリー」、月に一度ゲストのトークショーを行う「勝手に講演会」、参加者同士がテーマトークを行う「Dialogue for Future」など活動を広げている。
今後について、守屋さんは「これからはもっと地域へ溶け込みたい。自分たちだけでなく、街にとってメリットになれれば」と意気込む。
10月4日には勝手に講演会「みんなでつくる、みんなの地下鉄。」を開催予定。開催時間は19時~(18時45分開場)。参加費は1,000円。