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三ノ輪で続く江戸指し物 徳川幕府が発展させた木工芸「商品」を次世代へ

3代目の渡辺彰さん

3代目の渡辺彰さん

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 東京メトロ日比谷線三ノ輪駅近くの「江戸指物(さしもの)渡邊」(台東区竜泉3、TEL 03-3873-3050)が、昭和初期の創業から80年を過ぎた今も伝統を引き継いでいる。

江戸指物渡邊の掛け棚

 指し物とは、くぎを使わずに木と木を正確な寸法で組み合わせる「ホゾ組み」と呼ばれる木工芸のことで、「指す」は「差す」とも。朝廷や茶道用に発達した京指し物に対し、江戸指し物は将軍家や大名家などの武家や商家、歌舞伎役者用のものが発達したといわれており、徳川幕府が職人町を造って手工業を発展させたのが始まりとされる。

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 1928(昭和3)年ごろに初代渡辺松太郎が創業した同店は、3代目の彰(あきら)さんが高校を卒業して家業に入り受け継いだ。小さいころから仕事場を見ているうちに「自分でもやりたい」と思っていたところ、祖父から「継ぐなら早いほうがいい」と言われ決心したという。

 伐採した木から直接切り出した無垢(むく)材にこだわり、「木目を最大限に生かすことを信条にしている」という彰さんは、注文が入ると客から細かい希望を聞き、要望に合わせたものをオリジナルで制作する。新築祝いをテーマにして作ったオリジナルたんす「大黒柱」は、多くのからくりや仕掛けが施され「へそくり」が入る隠し引き出しがあり、棚全体が回転して表の見栄えを変えられる。「自分が面白くてやっていることが客に喜ばれることがやりがい」という彰さん。「指し物は芸術ではなく商品。100年過ぎても日常で使って次世代に引き継いでほしい。何代も使っていると言われるとうれしい」とも。

 最近では、関連する漆塗りやメッキ加工職人が高齢化や後継者不足で廃業するなど、仕事に対する融通が利かなくなっているという。「若手の修行になる簡単な仕事がないのが後継ぎを育てる時の難点」という現状がありながらも、「物を大切にする日本文化として、伝統工芸がなくならずに続いてほしい」と力を込める。

 修学旅行生の体験も受け入れる同店は、実際に「ひのきの箸作り」などを指導する。「初めは棒だったのが徐々に箸になっていくのが楽しい」と参加した中学生は笑顔を見せる。「道具や指し物を知らない世代の子どもが、こうして学びに来るのがうれしい」と彰さんは子どもたちの箸を仕上げながら表情を緩める。

 主な商品は、「クワ材の印籠(いんろう)」(27,000円)、「名刺入れ」(1,620円)、「手鏡」(3万240円)、「大黒柱(97万2,000円)、「飾り台」(4万6,440円)、「掛け棚」(16万2,000円)など。

 営業時間は10時~18時。

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