浅草・伝法院通りにある、つげ櫛(ぐし)の製作販売を手掛ける専門店「よのや櫛舗」(台東区浅草1、TEL 03-3844-1755)が創業から約300年を迎える。
1717(享保2)年創業の同店は、先々代の峰川光三郎さんが「よのや櫛舗」と屋号を定め、約80年前に現在の文京区本郷から「浅草」に移転してきた。現在8代目店主を務める斉藤悠(ゆたか)さんは「店を継いだのは、かわいがってくれた先代たちに恩返しをしたいから」と笑顔を見せる。
つげ櫛は、製作に年単位の時間がかかるという。「木は切ったままでは使えない。半年ほどかけていぶし鍛え、3分の1程度まで水分を飛ばして締(し)める。そこからまた半年以上寝かして徐々に通常の湿度や温度に慣らす工程を経て、強く堅いつげの板ができ上がる」と斉藤さん。
静電気や摩擦熱が起きにくく自然に地肌のマッサージができる「髪を美しくする道具」として、昔から髪結いなどに使われるつげ櫛は「手入れをしながら使えば、2代・3代と使える道具になる」と話す。
「材料の『つげ』は、創業時から鹿児島県指宿(いぶすき)産を使っている。適度な育成速度があり冬を経ることで、くし作りには最適」とも。
外国人観光客も多い浅草だが、「特に日本人の女性に使ってもらいたい」と斉藤さん。「日本古来の素材と手法で作られたつげ櫛は日本人にこそ、その良さが実感できる」と話す。斉藤さんは、数百年の伝統を守りながら時代のヘアスタイルやニーズに合わせ、現代女性の使いやすい形に細かな改良を施しているという。
主な商品は、とかしぐし(ショートヘア用、セミロング用、ロング用)11.5センチ(各5,800円~)、12.5センチ(各1万2,000円~)、13.5センチ(各1万6,800円~)。
斉藤さんは「浅草で唯一のつげ櫛専門店として、本当に良いものを後世に残したい」と意欲を見せる。
営業時間は10時30分~18時。水曜定休。