都営大江戸線蔵前駅近くに書店「さとうほんや buch(ブーフ)」(台東区蔵前3、TEL 03-5825-4886)がオープンして1カ月がたった。
店内に読書机を置き、絵本から写真集まですべての販売書籍が自由に閲覧できる同店。読書アドバイザーで店主の佐藤浩士さんが選んだ「好きな本」「気になる本」「子どもたちに読んでほしい絵本」などを表紙が見えるよう1冊1冊陳列している。「表紙を見れば作家が何をしたいかだいたいわかる」という佐藤さんは「背表紙ではなく表紙を見せる本屋にしたかった」と話す。
店名の「buch」はドイツ語で「本」という意味。大学時代にドイツ語を専攻していた佐藤さんが初めて習った単語だったこと、大好きだった書店がイタリア語で「本」という意味の名前を付けていたことから決めたという。
福島の実家が本屋だった佐藤さんは、跡継ぎとして育てられたことに反発し一度は別の道を志したが、紆余(うよ)曲折を経て26歳の時に「自分の天職は本屋だ」と悟り、飛び出した実家に戻り「俺が本屋をやる」と家族に宣言し、福島で開業したという。
震災後に一度店を閉めたが、新たに東京で開業したいと蔵前に出店を決めた。「buch」と合わせた店名の「さとうほんや」は、福島で営業していた「佐藤書店」が街の人たちに「さとうほんや」の愛称で呼ばれていたことから付けた。
「都内をくまなく歩き、蔵前を出店場所に選んだのは、コンパクトな中にいろいろなものが詰まっている感じが自分の目指したい本屋と似ていたこと、何よりも人とのつながりを大切にする下町だから」とも。
読書アドバイザーのほか、ワインエキスパート、旅行業務取扱管理者の資格を持つ佐藤さんは、「好きなワインを置き、自然やワインに触れる旅を企画し提案するツアーカウンターを設け、旅の話ができる本屋にしたい」と意欲を見せる。
本以外にも「チェキ」「ポラロイド」「腕時計」など、ガジェット類を多数並べる店内は、「佐藤さんの好きな物を集めた秘密基地のような場所」と常連客は話す。
「タブレットが普及し電子書籍が広まっているこの時代に、あえて紙で作られた本を扱っていこうと決めたのは、本自体が作家のアート作品のようなもので、本を所有することの喜びは尽きることがないと考えたから」と佐藤さん。
「気になる表紙やタイトルの本に出会ったら、まずは手にとって開いてみてほしい。いい本との出会いはそこから始まる」と本に触れることを薦める。
営業時間は10時~19時(9月より変更あり)。