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奥浅草「吉田カバン記念館」 A-ROUND期間中特別開放 創業者のアトリエ再現

再現された作業場と野谷久仁子さん

再現された作業場と野谷久仁子さん

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 浅草今戸神社近くの「吉田カバン記念館」(台東区今戸1、TEL 03-3876-4655)が10月31日から始まる「浅草A-ROUND」の期間中、特別開館する。

記念館エントランス

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 オープンから5年を迎える同館は通常、水曜・木曜のみ開館している。今年も奥浅草の革産業やものづくりを広く周知、拡散することを趣旨とするイベント「浅草A-ROUND」に参加を予定し、期間中は時間を延長して開放、自由に館内を見学できるようにする。

 同所は創業者・吉田吉蔵さんが生前、職人が資材問屋を何軒も歩き回らなくてもいいようにと、製作に必要な革や芯材、金具、糸などの資材を保管する場所として使っており、特定の型抜きに対応する職人が革資材を作る場所としても活用していたという。晩年、経営を退いた吉蔵さんは、ここで自分が作りたいものを心ゆくまで手縫いで作っていたという。「父が、帰宅のための迎えの車を遅らせてほしいと頼むほど、ここでの作業は幸せな時間だった」と同館を管理する次女の野谷久仁子さんは当時を懐かしむ。

 「作ったものを分散させず、父が愛してやまない場所に作業場を再現しよう」と2010年に同館を開設。以前はベニヤの壁材が経年から反り返り、室内から外が見えたり、床が抜けたりしている場所もあったという資材置き場。吉蔵さん他界後も父同様、野谷さん自身も作業場として使い続けたという家族にとっても愛着のある場所だ。

 1906(明治39)年生まれの吉蔵さんは12歳のころ、かばん屋へ奉公に出され、2度の戦争、関東大震災などを経験しながら29歳で独立。その後も晩年まで、ずっとかばんを作り続けたという。野谷さんは「機転が利く母は、疎開のため店を一時的に閉める時、ミシンや道具類を神田の中央線高架下の倉庫に移して東京を後にした。その倉庫が焼け残り道具がそのまま使えたことで、戦後すぐに仕事ができたのが大きかった」と振り返る。 

 「晩年ここを作業場としていた父は、革小物やバッグを作っては人にあげるということをしていたので、作品は各地の友人たちのところで今も大切に使われていると思う。もしできるなら一時的にその作品をお借りして、いつか父の作品展ができれば」と野谷さんはほほ笑む。「作り途中のかばんやいつも使っていたエプロンもそのままにしてある。ものづくりをする若い方に作業場を見てもらえたら」とも。

 通常の開館時間は水曜・木曜の13時~15時。イベント期間中は10時~17時。入館無料。

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