広島の原爆で被爆したピアノを使う演奏会「平和をつなぐ被爆ピアノ」が11月7日、台東区立石浜小学校(台東区清川1)の校庭で開かれる。
ピアノは、広島市の調律師、矢川光則(みつのり)さんが所有する被爆ピアノの1台。矢川さんは約30年にわたり、自らトラックを運転して全国に被爆ピアノを運び、演奏会を開いてきた。被爆ピアノの話を聞いた人からの寄贈も相次ぎ、現在はグランドピアノ1台を含む12台を所有。活動を次の世代に残そうと、自宅敷地内に「被爆ピアノメモリアルホール」も建てた。今回のピアノも、広島から新潟などを経て、矢川さん自身がトラックで運んでくる。
実行委員長を務める細野孝男さんは同校の卒業生。矢川さんが上野恩賜公園で被爆ピアノを公開したニュースをNHKで見て、「こういうことをしている人がいるなら交渉しに行こう」と2025年9月に矢川さんに電話をかけたのが始まりだという。矢川さんの演奏会の予定は全国で埋まっており、今秋に空いていたのが、この日程だった。
細野さんは、原爆の悲惨さを前面に出すのではなく、明るい雰囲気の会にすることにこだわった。「10秒で東京ドーム1500個分がなくなると伝えてもピンとこない。今これだけ幸せに暮らしている中で、楽しい時間を大事にして暮らすこと、学校でのいじめなどがくだらないことだと分かってもらえればありがたい」と話す。
「東日本は広島から遠く、被爆への関心が低い。被爆者の訴えとは別に、こちらはこちらで戦争を起こさない運動をしてはどうか」と持論を語る。平和の「和」を「輪」に置き換えた「平和の輪」をキーワードに、子どもたちにもなじみやすい表現を実行委員会で考えた。
当日は17時から矢川さんが被爆ピアノや活動について講演し、17時30分に開会。17時50分からピアニストの島田湧真(ゆうま)さんとフルート奏者の古賀ゆみ子さんが25~30分、5曲を演奏する。島田さんは富山県出身。洗足学園音楽大学ピアノコースを首席で卒業し、第4回日仏文化協会フランスピアノコンクールで最優秀賞を受賞した。古賀さんは台東区出身で、東泉小学校のオーケストラでフルートを始め、東邦音楽短期大学器楽科フルート専攻を首席で卒業。区内で和太鼓との共演や保育園での演奏に取り組み、東浅草小学校オーケストラの指導も手がける。
18時20分からは来場者全員で「上を向いて歩こう」を合唱する。伴奏は同校の音楽教諭が被爆ピアノで弾く。プロのピアニストが出演する中であえて教諭に依頼した理由を、細野さんは「プロが弾くとこのピアノが特別なものになってしまう。学校の先生が弾けば、『自分たちも近寄れる』と感じてもらえる」と説明する。「みんなで歌わないと輪ができない」とも。合唱後は19時まで、ピアノに触れたり写真を撮ったりできる時間を設ける。
会場はステージを組まず、校庭にピアノを置いてスピーカーで音を届ける。校長に校庭の利用を相談したところ、快く貸してもらえたといい、「立場がフラットで開かれた場所。この辺りで初めて開くにはいい」と細野さん。
来場してほしいのは「子どもたちと、その父母」で、100人の来場を目指している。当日のあいさつでは、「子どもがやりたいということは、まずやらせてやってほしい。100回失敗する方が1回後悔するよりも役に立つ」と父母に向けて伝えるつもりだという。
同じ日の10時~15時には、同校校庭と石浜公園(清川1)で「奥浅草クラシックカーフェスタ2026」が開かれる。クラシックカーの展示のほか、飲食ブース、ワークショップや物販、「たなかクラブ」「胡蝶(こちょう)スタジオ」「浅草たいこばん」によるステージ演奏が予定されている。山谷堀公園(今戸1)周辺では10時30分~17時、革製品のワークショップなどを体験できる「東京レザーコネクト」も開かれる。
被爆ピアノの演奏会は17時開演(16時30分から受け付け)。入場料は500円(18歳未満無料)。会場では被爆ピアノの保存などに充てる寄付も募る。