浅草・観音裏エリアの焼き鳥店「とり。」(台東区浅草)がオープンして、8月19日で1カ月がたった。店主の平島克憲さんが妻の明莉さんと2人で営む。
平島さんは宮崎県出身。30歳を過ぎた頃、「職人になりたい」とすし職人か焼き鳥職人かの二択で悩み、2013(平成25)年ごろ、自身が酉(とり)年生まれということも後押しとなって焼き鳥の道を選んだ。目黒の焼き鳥店で約5年の修業を経て独立を志し、当時から観音裏エリアで物件を探していたが、コロナ禍で断念。2020年からは修業先の同僚が営む品川区の焼き鳥店で約6年働いた。
転機は昨年、知人から現在の物件が空くという話が舞い込んだこと。「もともとやりたかったエリアだったので、それで決めようと思った」と平島さん。勤務先に半年待ってもらった上で、今年5月末で退職し、準備を経て7月19日に開業した。物件はビストロの居抜きで、内装はほぼそのまま生かし、焼き台を新たに設けた。
観音裏を選んだ理由について、平島さんは「浅草の街が好きで、知人もいてよく遊びに来ていた。言問通りを越えると観光地だが、一本奥に入ると静かで飲み屋が多い。いい街だと思った」と話す。観音裏は浅草寺に祭られている観音様の背中側に当たる浅草3~6丁目を中心とした一画で、花街として栄えた呑兵衛(のんべえ)文化が今も残るエリア。「今は人気で物件が空かず、知り合いづてでないと出てこないと言われる。皆さんから『縁があったんだね』と言われた」と振り返る。
店名の「とり。」は、ひらがなの「とり」が4画で縁起が良くないことから、明莉さんの提案で「。」を加えて5画にしたのが由来。焼き鳥店の店名としては意外にも例がないと考え、シンプルさを重視して決めたという。
コースやおまかせは設けず、1本から好きなものを注文するスタイル。串は「砂肝」「ハツ」(以上300円)、「つくね」「レバー」「かわ」「すね」「ヤゲン軟骨」(以上400円)、「ささみ」「せせり」「手羽先」(以上450円)、「ソリ」(550円)、「合鴨」(600円)など。野菜焼きは「しいたけ」(500円)、「万願寺とうがらし」(600円)などをそろえる。
一押しは、通常もも肉と一緒に串に刺すことが多いふくらはぎ部分を切り分けた「すね」の串。皮を外し、食べやすく細かくカットして提供する。一品料理は「ささみポン酢」など。ドリンクは「サッポロ黒ラベル小瓶」(600円)、「赤星中瓶」(800円)、「レモンサワー」(650円)などを用意する。
開店から1カ月、「街によって求められる焼き鳥が違うことが分かり、勉強になった」と平島さん。同店では砂肝やハツ、レバーなどの内臓系が人気で、「浅草は焼き鳥店が多いから、そういうものなのかな」と分析する。よく飲む客が多いことも予想外だったといい、「お一人さまがガッと飲んで次の店へ、とはしごする方も多い。『今日何軒目?』という会話もある」と土地柄を実感している。リピーターも既に付き始めた。明莉さんは「女性のお一人さまも多く、20代後半から50代くらいまで幅広い」と話す。
インバウンド需要は特に見込まず、地元客中心の店づくりを目指す。平島さんは「入りづらい外観かもしれないが、中はアットホーム。気さくに入ってきてもらえれば、満足してもらえる接客と食事を目指したい。お一人さま大歓迎」と呼びかける。5年後については、「地元の常連さんに囲まれてワイワイできる情景が浮かべばいい。妻と2人でこのままやっていければ。『まちの焼き鳥屋さん』を目指す、そこはぶれないようにしたい」と話す。
営業時間は18時~23時。水曜定休。